キングオブフルーツ

クイーンオブフルーツといえばマンゴスチンであるが、キングオブフルーツといえば泣く子も黙るドリアンである。

僕はこのドリアンが大好きである。

多くの友人はドリアンが嫌いらしい。
ドリアンが好きという人があまり近くにいないのが残念である。

ドリアンは椰子の実と同じくらいの大きさで、色は茶色、ごついトゲで全身包まれている。
日本では1個1万円位で売られているため、そこまでお金を出して買う気にはなれないが、東南アジアに行くと信じられないくらい安い価格で売られている。
タイ、香港などではよく屋台で売られていて、価格は日本の数十分の一程度。

味もさることながらその匂いにドリアンの凄さがある。
その匂いたるやこの世の匂いと思えるものではなく、鼻を劈く勢いは何物にもたとえ難い。
ましてやそれが食品の匂いであるとは恐ろしいことで、最初にこのドリアンを食べてみようと思った人はよっぽど勇気があったか、よっぽどひもじい人だったのだろう。
始め匂いは大したことないのであるが、熟してくると回りの皮がむけてきて強烈な匂いを発し始め、恐ろしいことにそれが食べごろの合図なのだ。

香港のホテルでは部屋にドリアンを持ち込むことを禁止している場合が多いのであるが
「何とかなるだろう」
と思って部屋に持ち込んだところ、滞在期間の4日を経過しても部屋の匂いが取れず、香水を撒き散らして急場を凌いだことがある。

ドリアン一つは幾つかの房に分かれていて、一房でもかなりのボリュームがあるので大抵この一房を二、三人で分けて食べる。
ところが香港ではドリアンのあまりのおいしさに量を忘れて一房どころか一個まるまる食べて死んでしまう人が毎年数人はいるらしい。
ドリアンはカスタードクリームの塊みたいなもので、相当カロリーがあるために、一個食べてしまうとその摂取カロリーがなんと致死量を越えて死に至る場合があるという。
毎年夏になるとそんな記事が香港の新聞を飾る。
僕はどんなにがんばっても一日二房(一個の約四分の一)が限界で、それ以上は不可能である。
それを1日にまるまる一個食べてしまう人の神経が知れないが、致死量まで食べてしまうほどこのドリアンはおいしいものなのだ。
これを禁断の果実と言わずして何を禁断の果実と言おうか。

匂いの説明に終始明け暮れてしまったが、その味のほうは本当にうまい(と思う)。
クサヤといっしょで、匂いを嗅いでしまったら最後、食べなきゃ損。
匂いと味はベツモノ。
ねっとりとした食感でありながらフルーティーな風味が後を引く。

以前タイの離島で、へらへらしながら歩き回っている障害者がいた。
地元の人がいうには昔彼は正常であったのに、木になっているドリアンが落ちてきて頭を直撃して以来、その彼はアホになったという。
なんと恐ろしい果物なのだろう。
いろいろな意味で人の人生を変えてしまう。
これがキングオブフルーツなのだ。