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「本の間」

 人生の師匠といえる人物は何人かいるが、それ以上に僕の人生に大きい影響を与えているのが本である。
 僕は小学生の時から本が大好きで、中学高校とかなりの本を読んだ。
 今でも講演料を受け取るたびに本屋へ行ってごっそりと本を買う。
 本は紙に文字が印刷してあるだけのものであるが、それが人を興奮させたり、泣かせたり、読み手の人生を塗り替えてしまったりするし、社会を揺り動かしてしまうことすらある。
 「ペンは剣よりも強し」とはよくいったもので、そこに本の真価がある。
 立花隆の記事が時の首相田中角栄を退陣に追い込んだのは有名な話である。
 一冊の本を書き上げるのは大変なことである。
 書き手の人生が乗る。
 一冊の本にはドラマがある。 読み手はたった数時間を費やして読みきるだけで、その世界を共有できる。
 いわば時間の有効利用とでもいえよう。
 その最たるものは人物記である。
 一人の人間が一生かけて経験することを、僕らは人物記を読むだけで疑似体験することができるのだ。
 これは人生何度も生まれ変わって経験することを一回で済ましてしまうほど時間の有効利用ではないか。
 だから僕の人生の師匠は坂本竜馬であるし、上杉鷹山、勝海舟、福沢諭吉、宮本武蔵、ナポレオン、ガンジーであるといえる。
 人生の節目に来た時、「この題、竜馬ならどうやって解決するだろうか?」と、あたかも竜馬と知り合いであるかのように考えられる。
 自分の心の中に竜馬がいる。
 これも司馬遼太郎「竜馬がゆく」、武田鉄也原作「おーい!竜馬」のお陰である。
 誰が書いてもいいわけではない、司馬遼太郎、武田鉄也であるからいいのだ。
 彼の人生を投影しているからである。
 僕の25年の生涯で衝撃的といえる本との出会いがいくつかあった。
 その内二つを紹介することにする。
 はじめは小学生の時に読んだ絵本で、ルイズ・アームストロング著「レモンをお金に変える法」。
 この本は主人公の男の子がレモネードのお店を出す物語で、ビジネスのドラマが面白おかしく綴られている。
 僕はこれを読んで将来は会社を作りたいと本気で思った。
 ぼくのビジネスに対する情熱はこのとき開花したのである。
 次は中学生の時に読んだ童門冬ニの「上杉鷹山(上・下)」。
 ケネディーに「最も尊敬する歴史上の人物」といわしめた鷹山は、青年の時、最も貧しい藩である米沢藩の経営を任され、僅か十数年のうちに最も裕福な藩にのし上げていく。
 アメリカが建国される遥か以前に、「人民の、人民による、人民の為の政府」という考え方を発案実践した人物である。
 僕は読み終えて一人の人間が本当に世界を変えていくことができると確信し、以来壮大な夢を持ちつづけることになった。
 どんな本と出会うかによって人生大きく変わる。
 以前本といえば高級品で庶民が入手するのは困難であった。
 ところが最近は本の価格が安く、誰でも欲しい本を入手できる。
 それはとても素敵なことではないだろうか。
 勝海舟が現代に生きていたらさぞ喜ぶことであろう。

竹田恒泰

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