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「中国のへそ」

 僕はよく中国に行く。
 一人でぷらりと旅に出るのだ。
 今までの中国滞在は合わせると4ヶ月を超えるけれども、いつもチベットとか雲南とか、へき地ばっかりで、実はこの秋初めて北京に足を踏み入れた。
 中国は30以上の少数民族のまとまりで、いわばアフリカがひとつの国になっているようなものだから、地域によって何もかもが違う。
 これほど中国を旅している僕にとっても、まったく別の国に来たような気がした。
 北京の人たちはお上品だ。
 ま、初めて中国に来た人から見ればそうでもないのかも知れないけれども、中国の中で比べれば、格段にお上品である。
 他の地域の人民との違いは、まず、建物の中で痰を吐かないこと。
 ウェイトレスが料理を運びながら「ガー、ペッ!」をするのが大陸の常識だからこれは大変な違いである。
 しかも、外であっても「ガー!」で止めて、ごみ箱まで行って続きの「ペッ!」をする人が多い。
 なんという気の使いよう。
 次に、若い女性が人前で鼻くそをホジらないこと。
 など基本的なことから始まってファッションに対する気遣いなどは格段に違う。
 とにかく北京はでかい。
 街がでかいのは当たり前として、何に付けてもでかいのだ。
 天安門広場なんかは半端な広さじゃない。
 世界中に広場はたくさんあるけれども、そんなものじゃない。
 通常広場といえば、街角に申し訳なさそうにひっそりと、何かのついでに存在しているものであるが、天安門広場はしっかりと広場としての存在感がある。
 ここで百万人集会ができるという。 ちょっと想像がつかないが、NHKホールが2千人だから、その500倍とでもいおうか。
 ここで歴史上の事件が繰り返されたと思うとじっくり座っていて感慨深いものがある。
 やっぱり一番でかさを感じるのが故宮である紫禁城。
 元の時代から王宮として使われているのだが、歴史の長さもさることながら、その規模たるや右に出るものはないだろう。
 映画「ラスト・エンペラー」で有名なあの紫禁城である。 部屋の数が約九千。 僕は朝十時に正門を入り、見学を終えたのが夕方5時。
 それでも見切れない。
 建物がすごいのであるが、それにも増してすごいのは、こんなものを作ろうと考えた人の想像力だ。
 後にも先にも例がない建築物であろう。 神様が「キリン」を作ってしまうのに匹敵するほど奇抜なアイディアである。
 しかし、それ以上にすごいのは、紫禁城内にスターバックスの出店を許可した役人と、恐れ多くも紫禁城に出店してしまおうと計画した担当者だ。
 確かに中心街にスターバックスがあって驚きはしたものの、城内で古い瓦屋根の下にスターバックスのマークを見たときは大爆笑。
 法隆寺の御堂の中にマクドナルドを入れてしまうようなものである。
 恐るべし中国人。小遣い帖 北京ダック一人で2人前食べて50元(約600円)という安さ。
 宿もシングルでトイレ・バス付き中心街まで徒歩4分の立地で一泊百20元(約1300円)という優良安宿を使って、4日で7千円も使わなかった。


竹田恒泰

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