小さくとも尊敬される国

総務省は二月二十一日、平成十六年の推計人口を発表した。それによると平成十六年十月一日現在で一億二七六八万七〇〇〇人であるという。男女の合計では前年を上回ったものの、男性は九〇〇〇人減となり、戦後初めて減少に転じた。 日本で始めて国勢調査が行われた大正九年以来、総人口が減少したのは終戦の昭和二十年(前年比二二八万六千人の減少)だけであり、今回の推計結果は極めて重要な意味を持つ。これまでは「高齢化」が取り沙汰されてきたが、間もなく「少子化による人口減少」という次の段階に突入する。そしてこれは日本も世界の国々も経験したことのない未知の領域なのだ。

国立社会保障・人口問題研究所は、日本の人口は平成十八年の一億二七七四万一〇〇〇人をピークに、平成十九年から減少に転じるとの予測(中位推計)を発表している。また同推計によると、日本の人口は二一〇〇年には六四一四万人と、ピーク時のおよそ半分、つまり昭和五年当時の人口にまで減少するという。

急速に人口が減少すると、社会の至るところに歪みが生じる。労働人口の不足により、年金などの社会保障制度が機能しなくなることが危惧されている。 しかし、一定期間人口減少が続くと、現在の若年層が高齢者になった時点で、高齢化に終止符が打たれることになる。少ない若者が少ない高齢者を扶養するなら年金問題などは生じないわけだ。高齢化は途中の一時的な現象でしかない。

高齢化の段階を経て、本格的な人口減少期に入ると、需要と供給が共に縮小することになり、日本の経済規模は縮小を余儀なくされ、国の活力が停滞すると考えられる。 それでなくとも、我が国は長引く不況に苦しんでいる。国民はかつて日本が世界一の経済大国であった頃の栄光を追いかけているが、それも今となっては夢の話。本格的な人口減少期に入れば、日本の経済力衰退は避けようがない。

かつて世界の金融の中心はローマ帝国のローマだった。その後世界金融の舞台はイタリアのベネチア、次いで英国のロンドン、そして米国のニューヨークへと移り現在に至る。それが将にパックス・ロマーナからパックス・アメリカーナへの一連の流れであった。昔繁栄を極めた国が再び繁栄した国が一つでもあったろうか。堕ち始めたものを保つことはできないと考えるべきなのだ。

英国はかつて世界一の経済大国だった。そして現在の日本の経済力は英国を凌駕している。しかし、なぜ英国は国際政治と世界経済の舞台であれほど影響力を持つのか。そしてなぜ日本はこれほどまで世界に影響力を持たないのか。 それは、経済力があれば世界のリーダーになれるわけではないからだ。世界で尊敬される国こそがリーダーになる。 維新後日本は経済力のみを追い続けてきた。だが今の日本から経済力を取り上げたら一体何が残るのだろう。元来我が国には世界に誇るべき歴史と文化があるはずだ。日本は経済大国としてではなく、小さくとも尊敬される国にならなければならないのではないか。

竹田恒泰
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