殺人TSUNAMI

昨年末私は海外にいたのだが、CNNニュースを見ていて、アナウンサーがしきりに「Asian tsunami」と繰り返しているのが耳に付いた。「Asian tsunami」とはもちろん、平成十六年十二月二十六日のスマトラ島沖大地震に伴う大規模な津波を意味する。「津波」は何と、既に英語になっていたのだ。私は慌てて英和辞典を引いてみた。案の定、「(tsunami)津波」となっており、しかも「tsunamic」という形容詞まで造られている。

思い起こせば、英語になる日本語は暗い意味の単語が多い。古いところでは「harakiri」(腹切り)、最近では「karoshi」(過労死)、そして「hentai」(変態)まで、もう少し素敵な単語が英語にならないものだろうか。確かに自ら腹を切ったり、死ぬまで働いたりするのは日本人くらいのものだ。(最近のニュースを見ていると日本人に「変態」が多いと言われても否定しずらいのが辛いところではある。) さて「津波」だが、この単語が英語になるということは、腹切りや過労死並みに「津波は日本のもの」とされるほど、日本は津波で苦しんできたということだ。平成五年に奥尻島を襲った津波の記憶は新しい。地震大国日本は、津波大国でもあったのだ。 その地震大国日本が、今回のスマトラ島沖大地震の津波で無傷でいられたのは奇跡的だったと考えてよい。まず第一に、世界で発生する地震の一〇~一五パーセントは、小さな島国日本で発生しており、今回の地震も下手をすれば日本近海で発生していたかも知れないということが指摘できる。

第二に地震が起こった日時であるが、あと数日でも遅ければ、日本は年末年始の大型連休に突入していた。その場合、日本から信じがたい人数の旅行者が東南アジア、インド洋一体に押し寄せていたことは明白であり、日本人の犠牲者は十倍、いや場合によってはそれ以上に達していた可能性がある。 そして、次に、もし震源地がもう少し東にずれていて、マレー半島の東側で地震が起きていたら、その津波はインド洋ではなく、東シナ海に広がったはずだ。その場合、津波は日本に直撃していたことになる。日本の大都会が大津波に巻き込まれるというだけでも身の毛もよだつ恐ろしさであるが、実は本当の恐怖は津波が原発を襲うことに他ならない。 ちなみに今回の震災で津波に襲われた地域には、インドが保有する十四基の原発があった。その内一基が緊急停止し、発電所内で死者が出た。政府は放射能漏れなどの心配は無いとしているが、それも甚だ疑わしい。一歩間違えば第二のチェルノブイリとなるところだった。

そしてもし津波が東シナ海を襲った場合、中国の三基、台湾の六基、韓国の十六基、そして日本の五十二基、合計七十七基の原発が一斉に津波の危機にさらされることになる。その中で一基でもチェルノブイリ級の事故を起こせば、東アジアから千万人単位の環境難民を生み出すことになる。 三十万人の犠牲が多かったのか少なかったのかは読者の判断に任せよう。

竹田恒泰
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