「Yes」とも「No」とも言わない日本!

「日本のパスポートが一番高値で売れるらしい」

私が学生時代に海外を旅していた時、ドミトリーでたまたま同じ部屋になった日本人からこんな話を聞かされたことがある。勿論パスポートを売ることは旅券法で禁止されている犯罪行為であり、許されるものではない。しかし海外で窃盗に遭うなどして身包みを剥がされて無一文になった場合、もし手元にパスポートがあれば、それを売って帰国資金を得る方法があるというのだ。私はパスポートを売却して現金を得るという発想そのものよりも、むしろ二百以上存在する国の中で、日本のパスポートが一番高い値段が付くという点に興味を持った。

なぜ日本のパスポートは高いのか、その答えは「使い勝手が良い」、この一言に尽きる。つまり日本のパスポートは世界中で発行されているパスポートの中で最も多くの国に入国でき、しかも入国条件も最も待遇される「最強のパスポート」なのだ。これは奇跡的と言もいえるほど凄いことである。全ての国と地域で有効なパスポートを発行している国などそうあるものではない。また申請すれば誰でも簡単にこの「最強のパスポート」を手できるのは日本だけだと断言する。そもそもパスポートを簡単に発行してくれない国が世界の大半を占めている。

そしてパスポートの使い勝手を左右するのは、パスポートを発行する国の経済力は勿論のこと、外国との仲の良さこそ重要な要素である。つまり相手国との関係が良好な場合に限り、良い条件で入国が許可されるのであり、パスポートの使い勝手は、発行国がどれだけ多くの国と友好的な関係を築き上げているか、これにかかっているのである。

つまり、日本という国は、国民が申請すれば誰でも「最強のパスポート」を手にすることができる奇跡の国なのである。そして最強の条件を全て満たしている日本のパスポートが最も使い勝手が良いのは当然の成り行きである。したがって日本のパスポートが一番高い値段が付くことに何ら不思議は無いのだ。

まさにパスポートの値段こそが、その国の外交成果の点数であるという事実に、今我々は気付かなくてはいけない。多くの日本人は、日本の外交は三流だと思っているだろう。しかし、日本は明治維新以来、外交の達人であり、長年の外交の積み重ねが日本のパスポートを「最強のパスポート」たらしめているのであり、日本は外交大国であった・・・・のだ。「であった」と書いたのは、小泉首相がイラク戦争を支持する声明を発表するまでのことであったためである。

一方米国の外交の結果は同時多発テロであった。テロの原因を米国外交の失敗に求めるべきであることは明白である。米国は「恨みの根」が存在していることを知りつつ、それを放置していた。

米国、ロシア、中国、台湾、アラブ、パレスチナ、イスラエルと同時に仲良くしている奇跡の国は日本ただ一国であり、それは湾岸戦争でお金だけを渡した、侘(わ)び寂(さび)外交の結果である。「YES」とも「NO」とも言わない日本であるべきなのだ。

竹田恒泰
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