鯨とウラン弾

ベルリンで国際捕鯨委員会(IWC)総会が開催され議論を呼んだが、総会が開催されたのが第二次イラク戦争でバグダッドが陥落してから二ヶ月程しか時間が経っていなかったためか、IWC総会で米英を始めとする欧米諸国が動物愛護を主張するシーンと、米英国軍が大量破壊兵器でイラク人を殺戮しているシーンが余りに矛盾していると思った人は多いのではないだろうか。片方で「動物を守ろう!」と唱えながらもう片方では「地球より重い」と詠われた人間の命を奪っていくのである。これではまるで警察官が暴力団の組員を兼務しているのと同じであり、彼等の主張する動物愛護が全て虚言に聞こえたのは私だけではないはずだ。

今回の第二次イラク戦争で注目すべきは、弾頭に劣化ウランを使用した劣化ウラン弾による核汚染である。「劣化ウラン」は、原発で使用された核燃料の燃えカスから作られるのだが、その燃えカスは「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれて、水と空気から隔離して一万年以上の保管を要する核廃棄物である。劣化ウラン弾は戦車の装甲を貫通させる威力を持つことから、米国はこの核廃棄物を練り込んだ爆弾を今まで実戦で大量に使用してきた。初めてこの爆弾が使用されたのは十二年前の第一次イラク戦争(湾岸戦争)で、その後ユーゴスラビア、アフガニスタンでも繰り返して使用された。言うまでもなく今回の第二次イラク戦争においてもこの劣化ウラン弾が使用された。しかも今回は英国軍が担当していたイラク南部でイラク軍の戦車から高濃度の放射能が観察されていることから、米軍だけでなく英国軍もこの劣化ウラン弾を使用したことがほぼ確実と見られている。また米国以外の軍が劣化ウラン弾を使用したのは今回が始めてのことである。

劣化ウラン弾が使用されると、周辺に放射性物質が撒き散らされる。この爆弾が爆発するとウランの粉塵が飛び散り、周辺地域の住民を被爆させ、今まで大量に放射線障害の患者を生んできた。しかし、その放射能も次第に拡散していき、時間と共に被害地域が拡大していく。爆発せずに地面に突き刺さった爆弾は、時間をかけてウランを地下に浸透させていく。ウランという金属は水に溶けるため、地下水に溶け込んだ汚染は飲料水、作物、畜産物を通じて広範囲に拡大していくことになる。事実第一次イラク戦争から十二年が経過した現在でもイラクでは放射線障害の患者数は増加の一途を辿り、その被害は確実に拡大している。

ところが、この人類が作り出した最も醜い兵器を平気で使用している国が、片や鯨に関しては神経質なまでに愛護を求めている。鯨がかわいそうであるという理由から、捕鯨船に監視委員を搭乗させ、一定時間以内に鯨を死亡させるように強く求めている。私はその国に問いたい。鯨は苦しんではいけないが、イラク兵もしくはイラク市民は苦しんでも良いのか。劣化ウラン弾を使用した国は、動物愛護や人権を語る資格はないと私は断言する。

竹田恒泰
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