被爆の民~イラクから現地リポート~

前回「戦争」こそ最大の環境破壊であると指摘したが、先月十日間の日程でイラクを訪問し、その「最大の環境破壊の現場」を取材してきた。戦争による環境破壊といっても色々あるが、最も注目すべきは弾頭に劣化ウランを使用した劣化ウラン弾による核汚染である。「劣化ウラン」は、原発で使用された核燃料の燃えカスから作られるのだが、その燃えカスは「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれて、水と空気から隔離して一万年以上の保管を要する核廃棄物である。劣化ウラン弾は戦車の装甲を貫通させる威力を持つことから、米国はこの核廃棄物を練り込んだ爆弾を実戦で大量に使用してきた。初めて使用されたのが十二年前の湾岸戦争イラクで、その後ユーゴ、アフガンで繰り返して使用された。

この劣化ウラン弾は周辺に放射能を撒き散らす。この爆弾が爆発するとウランの粉塵が飛び散り、周辺地域の住民を被爆させ、大量に放射線障害の患者を生んだ。しかし、その放射能も次第に拡大していき、時間と共に被害地域が拡大していく。爆発せずに地面に突き刺さった爆弾は、時間をかけてウランを地下に浸透させていく。ウランは水に溶けるため、地下水に溶け込みやがて汚染は飲料水、作物、畜産物を通じて広範囲に拡大していくことになる。事実十二年が経過した現在も患者の数は増加の一途を辿り、その被害は確実に拡大している。

バグダッドの小児病院を取材した。戦争後は小児癌の発生確率が十倍以上に跳ね上がり。奇形の率も六%を上回ると言う。病院には癌、白血病その他の放射線障害で死を待つ子供達が大勢いた。私が白血病棟を見学していた十五分の間に、目の前で二人の子供が息を引き取った。医師が死を告げ、取り囲む家族が泣き崩れるという光景は堪え難いものがある。ここ数年は比較的汚染の少ない地域でも患者数が急増しており、これは汚染地帯周辺で生産された農作物、畜産物、場合によっては飲料水にもウランが混入していることを明確に示している。今やイラク全土に汚染が及んでいると考えられる。イラク国民は今日も放射能たっぷりの料理を家族で囲んでいる。昔日本で売られていた「ウランまんじゅう」を笑えない時代に入った。

竹田恒泰
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