扇子を持つということ

夏になると扇子を持つ人が多くなる。

でも冬に扇子を持つところに扇子の真髄がある。 というのは、扇子は扇ぐための道具なのであるが、ただの扇ぎ道具として自ら甘んずるに留まらない。 明治に入って刀の所持が禁止され、腰に何か差していないと落ち着かないということで刀の代用品として広く使われていたのが扇子なのである。 そのため、扇子の作法は刀の作法と共通点が多い。

扇子を腰に差したまま人と話すことは大変に無礼であり、席に着くときには腰から扇子を抜き、それを腰から離れた位置に置く。 つまり武装解除して、 「私はあなたに敵意はありません。」 ということを示すのである。

だから本来扇子は季節を問わず持ち歩くものであり、冬であっても然りである。 扇ぐために扇子を持ち歩くのではないのである。 それを意識して扇子を腰に差すとなぜか気が引き締まるのは僕だけだろうか。 日本舞踊、茶道、落語などでも扇子は欠かすことのできないアイテムであるが、それぞれに作法や仕来りがあり、また意味合いが変わってくる場合もある。 夏に扇ぐ目的で扇子を持つ場合、浴衣に合う色の扇子を選んだりするが、普段持ち歩く目的であるならば無地の白扇がいい。 羽織袴等の礼装では必ず白扇と相場が決まっている。

しかし、毎日白扇子を持ち歩くとなると消耗が激しく、特に夏は扇いだりもするので更に寿命が短くなる。 夏の場合で3週間、冬なら1ヶ月半程で新品の扇子と交換する。 僕の場合普段から洋装、和装、ジーンズを問わず常に扇子を持参している。 白扇は売られている場所が限られているので一度に10本ほど買っておくのがお勧め。 白扇は扇子の中でも一番安い。

高価なものが必ずしも良いと言うわけではないのがこの世界の面白いところ。 普段あまり扇子を持たない人が扇子を持つと慣れない手つきがすぐにばれてしまう。 やはり普段から扇子を持ち歩き、その感覚をしっかりと身に付けておくべきである。 皆さんもこの夏をきっかけとして扇子を持ち歩く習慣を得られてはどうだろうか。

札幌市内のモスバーガーにて
竹田恒泰

【どこで買えるか】
デパートの呉服売り場、呉服店、祭り道具店、浅草仲見世 普通の扇子はよく売られているが、白扇は売られている場所が限られる。 1本500円から800円程度。